REPORT

2022.03.28

ツアー8日目最終日、東京公演レポート

ツアー8日目最終日、東京公演レポート

(※3/29 情報追記)


すべてのものには終わりがある。
3月19日(土)からはじまった東京→盛岡→仙台→福島→東京も最終日となりました。

ひさびさに帰宅したわたくしが、自宅から今日の会場、サントリーホールに近づくと、

ちょうど1号車が到着したタイミングでした。

今日は東京事務局の会社の後輩、熊谷歌那江さん(盛岡市出身のフルート吹き)もスタッフとして参加です。熊谷さん、第7期はSNSの発信、クラウドファンディング、渋谷のラジオ『渋谷の東北ユースオーケストラ 』(毎週水曜日11時30分〜11時55分)のプロデュースなどでサポートをしてくれていました。

昨日まで担当していた3号車が到着!

さっそく発見! 今日の「主張の強い服を着ている人」です。

トロンボーン西野蒼さん(宮城県出身の大学一年生)です。主張はこの黒いTシャツにありました。

東北ユースオーケストラ のルーツにあたる、311直後の被災地の学校の楽器の点検・修理のプロジェクト「こどもの音楽再生基金」のチャリティTシャツです。11年前にこのネーミングを考えたときは、ここまで「こどもの音楽」が「再生」するとは思いもしませんでした。なにしろ基金が発展してオーケストラができたのですから。

駐車場では自ら車を運転して駆けつけた福島事務局の渡辺豊さんが到着されたところでした。小6の息子さん颯太くんがヴィオラでステージの乗るわけですから、響きの良さそうなシャッターを背景にシャッターを押しました。

今日のサントリーホールの楽屋口でも関係者全員の抗原検査です。

東京事務局の宮川裕くん、なんだか頭がさっぱりしていませんか。さては、同じく昨晩ようやく家に帰った組なので、今日のために気合を入れて・・・。

ともあれ今日は時間が無いのです。さっそくゲネプロなのです。

TYOのテクニカルディレクターの飯島則充さんから、サントリーホールの歴史について、ベルリンフィルやウィーンフィルなど世界のトップ・オーケストラが日本に来るときは必ず演奏する場所であり、「世界一美しい響き」のために世界の一流演奏家がやってくる場所にみんなは立っているのだぞという自覚を促すオリエンテーションがありました。

プロマックスの社長である飯島さんが、「今回一番がんばったのは岡田だな」という、事務局の支柱、岡田直美さん(「プロマックスのキャンディーズ」ではミキちゃんを主張)から諸注意事項のお話がありました。

わたくしからは一言だけ。「今ここに立って、この見ている光景が夢のようです。みんな、お世話になった人のことを思い、とにかく感謝の気持ちで今日は演奏してください」

さっそく『いま時間が傾いて』からゲネプロはスタート。そして、その客席には作曲者である、坂本龍一代表・監督の姿が!
団員にとっては、ようやく会えた監督であり、第6期、第7期メンバーからすると、初めて見る監督です。

楽屋には当日配布のパンフレットでは楽曲解説を書いてくださっている荒川祐二さん(株式会社ネクストーン代表取締役COO)、団員内では「シュークリームおじさん」がいらしゃいました。飯島さんの鞄を指差しながら、”田中さん、これ、今日の「主張の強い服を着ている人」じゃないですか!”とのご指摘。

たしかに主張が強い上に、高いぞ。後ろには岩手公演に続き、東京に来てくださったTYO初の委嘱作品『くぐいの空』の作曲家、仁科彩さんの姿。

バックステージをうろうろしていると、8日間見続けたコンビが、マイクを持って愉快に談笑されていました。

右の音響・PAの近藤健一朗さんとサウンドエンジニアのオノ・セイゲンさんとです(わたくしの心の中では、「カトちゃんケンちゃん」ならぬ「コンちゃんゲンちゃん」と呼んでいます)。

ゲネプロが終わり、田嶋キャプテンから団員による出演者と事務局への感謝の寄せ書きが紹介された後、逆に団員から今回の定期演奏会の功労者、キャプテンの田嶋詩織さんとコンサートミストレスの渡邉真浩さんにも感謝の寄せ書きが手渡されました。

TYOの寄せ書き感謝文化、今年も健在でした。毎年の本番直前合宿では詰め込みスケジュールの中、「寝てね」と言うのですが、この寄せ書きのために時間を使ってもらっていると思うと心苦しいやら、うれしいやら複雑な気分になります。

このあと第7期の卒団式として、わたくしが卒団・休団の33名の名前を読み上げました。さみしいけど、卒団おめでとう!

舞台裏には、福島民報社の常務の荒木秀幸さん(TYO理事)が来られていました。

先週の地震で急きょ仙台・福島の公演が中止になったことから、福島民報社からの激励金を受け取りました。ご高配をどうもありがとうございました!

さて、開場時間前ギリギリにファンファーレ隊のリハーサル。パイプオルガンの前での演奏です。

演奏者はこちら。

Trp.中村祐登 冨澤祥吾
Hr.千田捺月 三上玲央
Trb.西野蒼
Tub.東舘祐真


そして「影アナ隊」のリハーサル。開演の直前にご来場のみなさんに館内での注意事項を団員があえてステージに出て5人の団員が代わる代わるアナウンスするのが「影アナ隊」です。

「影アナ隊」の一人、岩手県盛岡市のヴァイオリン竹田龍之介くん(小学5年生)が、カンペを握り締めながら緊張の面持ちで座っていました。

渡辺真理さんとツーショットでリラックスしてもらおう。そうです。ついに渡辺真理さんに司会を務めていただけるのです。真理さんからは翌日「がんばっていた影アナ隊にせんどうしていただけたので、あたたかな気持ちでステージでに立つことができました」とメールを受信しました。ありがたいことです。


一方こちらは余裕そう。開演前ミニコンサートの、高校生アンサンブルのメンバーです。

東京公演の開演前ミニコンサートでは以下の5組がアンサンブル演奏をしました。

・高校生アンサンブル トランペット吹の休日/アンダーソン
(坂本彩雲 石川慧花 蛭田恵梨沙 菊野奏良 海津洸太 鈴木南美 竹田陵司 小黒心寧)

・弦楽四重奏  ビハインド・ザ・マスク/ 坂本龍一
(渡邉真浩 伊藤拓也  井沢佳子  誉田憲丸)

・オーボエカルテット オーボエ4重奏/モーツァルト
(関根慧 渡邉真浩 伊藤拓也 日比野慎)

・ホルン五重奏 French Suite for four French Horns/リード
(大槻光理、菊野奏良、田嶋詩織、千田捺月、三上玲央)

・弦楽デュオ パッサカリア/ヘンデル
(渡邉真浩 日比野慎)


コンサートミストレスの渡邉真浩さん、よく見ると3つもアンサンブルに参加していました。そして「影アナ隊」も…。開演前から大忙しです。


こちらは会場前のホワイエ。

リアルクラウドファンディングと書籍販売のブースの準備が進みます。

この写真は開場前なので整然としていますが、東京公演では本当にたくさんの方に書籍購入やリアルクラファンへの参加をして頂きました。ありがとうございました。


そしてホール前には、スポンサーであるJA共済様のパネル展示。

先日、AERA (3/14発売号)、週刊新潮(3/17発売号)で雑誌記事になった団員インタビュー(Cl 蛭田さん、Perc 穴澤くん、OBの冨澤君)のパネルや、

団員達の寄せ書きパネルを展示しました。

さぁ、本番です。

世界初演の『いま時間が傾いて』の演奏が終わり、司会の渡辺真理さんがステージへ。
「では、ご紹介いたしましょう。東北ユースオーケストラ の代表・監督、坂本龍一さんです!」
満員のサントリーホールが大きな拍手で包まれます。
舞台袖のモニターを食い入るように凝視し、出番を待っていらっしゃったゲストの吉永小百合さんが、「真理ちゃん、泣いてる」と微笑みながら口にされました。2012年のこどもの音楽再生基金ライブ以来MCを引き受けてくださっているからこその想いを感じます。

満を持して、吉永小百合さんの登場です。

吉永さんもゲネプロでの約2年ぶりの坂本監督との再会を全身でお喜びなっていたお姿を眼にしたばかり。

毎回ご自身で装丁される朗読詩集の表紙は、「TYO 心」とウクライナ・カラーの二色で手書きされておりました。『母と暮らせば』『still life』の演奏にあわせ、6篇の詩を読まれます。
特に心に残ったのが、沖縄県の宮城夏喜さんが小学5年の時につくられたという詩『心のたんぽぽ』。
吉永さんの声が沁みます。
「心のたんぽぽいりませんか/よごれた心洗います/きっとあらそいなくせます」

鍵盤をなでるようなタッチで伴奏される坂本監督のピアノが繊細に響き渡ります。

3年ぶりのTYOでのステージ共演を果たされた二人の会話は、必然のように平和への願いの話題となりました。

本番前に舞台裏で吉永さんにご挨拶したら、「(盛岡公演リハーサルでの詩の代読録音をお聞きになり)田中さんの声は、すごくいいわね〜。歌でも歌っていらっしゃるの?」と言ってくださいました。書籍『響け、希望の音〜東北ユースオーケストラ からつながる未来〜』で帯文をいただいたのに続き、自らの声に推薦を頂戴したかのような晴れがましさでございました。

20分間の休憩に入りました。

田嶋キャプテンは、団員からの寄せ書きを配達です。

寄せ書きを手に眼を細める坂本監督です。

そして、田嶋キャプテンが2年越しの念願を坂本監督に提案しました。「サントリーホールの舞台裏のボードに東北ユースオーケストラ のロゴ・ステッカーを一緒に貼りたい!」です。

「もちろん、いいよ」と応じてくださったのです。

これで世界の一流オケの仲間入りです!(表面上は)

このあと田嶋キャプテンは、吉永小百合さん、渡辺真理さん、ソリストの4名それぞれソプラノの幸田浩子さん、アルトの山下牧子さん、テノールの樋口達也さん、バリトンの成田博之さん、そしてもちろん栁澤寿男さん、さらには東京事務局、福島事務局に団員からのお礼の寄せ書き配り行脚をしてくれたのでした。

すでに着ているスーツがジャージのようになっている、わたくしは小腹を満たす品を物色しました。

みなさま、ありがとうございました。

わたくしは、ボリューム感とハンディさを優先しました。

前半で6分推しと知り、ステージに出て立ち位置にたどり着くまでに歩きながら話し始められた渡辺真理さんのプロの技を振り返りながら、毎年いただくオリジナルのドラ焼を頬張りました。

第2部の前に指揮の栁澤寿男さんが、今期の集大成に臨むべく、舞台袖にご登場。

直前合宿の2日間で団員の演奏を飛躍的に引き上げられたことへの自信に漲っていらっしゃるようお見受けしました。

第九がフィナーレを迎え、鳴り止まない拍手にカーテンコールが延々と続きそうな中、団員の帰宅時間も配慮し、台本には無かった渡辺真理さんの出演者紹介で東京公演の幕は閉じました。

本番の様子を数々にメディアに取り上げていただけました。
現時点でわかる記事のリンクをまとめました。順不同です。

■日刊スポーツ『坂本龍一、東北ユース公演で吉永小百合と平和願う がん治療公表以来初公の場』『坂本龍一&吉永小百合が反戦訴え「みんなで絶対にダメだと言ってあらがえばよい状況になる」』

■毎日新聞『坂本龍一さん闘病後初の姿 「3.11とウクライナに思い」新作上演』

■ORICON NEWS『がん療養中の坂本龍一、3年ぶりにイベント登場 吉永小百合と平和への祈り「争いがなくなるといいですね」』

■デイリースポーツ『がん闘病の坂本龍一 吉永小百合が安ど「思ったよりお元気そう」3年ぶりステージ』

■サンケイスポーツ『坂本龍一ががん公表後初の公の場 吉永小百合はロシアのウクライナ侵攻に胸を痛め平和を願う』

■朝日新聞『おかえり教授 坂本龍一さんコンサート復帰』『がんで治療の坂本龍一さん、舞台に復帰 吉永小百合さんと共演』 

■読売新聞『坂本龍一さん監督の被災学生オケ、3年ぶり公演で新作披露…吉永小百合さんも詩を朗読』

■スポーツニッポン『2年2カ月ぶり共演 坂本龍一と吉永小百合 演奏会で反戦訴え…ウクライナへの思い込めた』

■ENCOUNT『がん療養中の坂本龍一「泣きそうだから、わざと笑ってしまう」 3年ぶり演奏に感無量』

■岩手日報『がん療養中の坂本龍一、3年ぶりにイベント登場 吉永小百合と平和への祈り「争いがなくなるといいですね」』

■福島民報『がん療養中の坂本龍一、3年ぶりにイベント登場 吉永小百合と平和への祈り「争いがなくなるといいですね」』


今回の演奏会では、坂本監督のお身体へのご負担を配慮し、本番後の記念撮影は無しということだったのですが、例外として応じてられた方々です。

それはもう、今回の演奏会のクオリティは、指揮の栁澤寿男さんあってのこと。坂本監督は「演奏レベルはプロだった」とおっしゃっていました。

第一期のコンサートマスター伊藤拓也くんと第二期と今期七期のコンサートミストレス渡邉真浩さん。同級生の良きライバルとしてしのぎを削ってきた二人も今年で卒団です。

この撮影に飛び込む男が一人!

同じく今年で卒団するトランペット中村祐登くんです。中村くんがはじめてくれた有志演奏会は、今に続く東北ユースオーケストラ の大切な活動です。有志演奏会サポーターのページは、こちら。ご支援いただけるとうれしいです。

今日の演奏会にOBOGお手伝い隊が集まってくれました。リアルクラウドファンディングや書籍の販売のボランティアに名乗り出てくれたメンバーです。

右から橋本果林さん、大波さくらさん、西丸総くん、菅野桃香さん、日比野愛さん、木島美羽さん、樅山瑞歩さんです。

しかし、最後まで手伝ってくれた佐々木潮里さんの姿がなかったと後悔し、ご本人に問い合わせたら、「当日の現場写真は無いのですが」とホールを出て駐車場で撮った写真を送ってくれました。

中村祐登くん、ナイスプレイ!
OBOGのみなさんは、お手伝いをしなくてもいいのでいつでも来てくださいね。

団員の送り出し、見送りの際に、慌ただしくしていたので気づけなかった、お祝いの花。

岩手公演にはゲストででていただきながら、東京公演にまで気にかけてくださるお気持ちがうれしいですね。

東北ユースオーケストラ の合宿、本番での解散時の恒例の標語。「家に帰るまでが遠足です」

ちょうど福島事務局の渡辺豊号も家路に向けて出発のようです。

もともとはこの時間からのバス出発で郡山駅からは家に帰り着けない団員を送ってもらう予定だったのですが、息子の颯太くん以外にも「ままどおる大使」2名が乗り込んでいるようです。

帰宅のバス組は、郡山駅、福島駅、そして仙台駅での途中下車は23時頃、最終の盛岡駅には25時をまわって無事到着できたようです。
田口陽大くん、優葵さんの姉弟団員に、つながる合唱団で参加されたお母さま真左美さん、お父さまにとっては家族4人の旅となりました。バスに乗り込む前に岩手公演をご鑑賞された田口お父さまから「司会、良かったですよ。最初のマスクのハプニングも場が和みました」と優しくお声がけくださいました。
翌27日の日曜日にお母さまからは、
「事務局をはじめ関わってくださった方々のご尽力があったからこそ、困難な中でもこのように素晴らしい演奏会ができましたことは、私たち家族にとっても一生の宝物となりました。今後とも活動が続く限り応援していきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。」とメールをいただきました。そして、「バス車内の岩手男子3人組爆睡中のものです。ちなみにみんなお弁当も食べずひたすら寝ておりました。陽大は今まだ寝ています…(笑)」と帰りのバスの車中写真を送ってくださいました。

最高の報道写真です!

また福島事務局の渡辺豊さんからは、前日の東京往復のロングドライブ後にもかかわらず、大型楽器の福島民報社の管理スペースへの返却が終わりましたとの報告をいただきました。

標語に追加が必要ですね。
「家に帰るまでが遠足です。楽器を返すまでが本番です。」
渡辺豊さん、手伝ってくれた福島の団員のみなさん、ありがとう!

冷静に考えると、今回の演奏会は、2度と同じメンバーでは再演できないなと事務局内で振り返っていました。2部の第九における東北ユースオーケストラ の団員とつながる合唱団の共演は、まさしくそうです。しかし、思えば東北ユースオーケストラ だけを取り出してみても、いつも定期演奏会が3月なので受験や卒業式との重なりで、今回も岩手公演と東京公演ではステージに乗っているメンバーは違いました。つまり、つねに一回性のオーケストラというのがTYOの特徴なのかもしれません。自然の大きな力に翻弄されながらも、共演するご縁とその機会のかけがえなさを慈しみ、一期一会に感謝することを運命としたオーケストラなのかもしれません。

東北ユースオーケストラ演奏会2022にご来場のみなさま、支えてくださったすべてのみなさまに深謝申し上げます。

2022年3月、東北ユースオーケストラは次の高みへと手を伸ばせたような気がしています。

すべてのものには始まりがある。