REPORT

2020.04.04

TYO第5期リモート卒団式

TYO第5期リモート卒団式

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、第5期の公演は中止となりました。
中止決定の連絡を受け、涙を流した団員もいたと聞いております。

そして公演だけではなく、毎年の演奏会終了後に行われる「卒団生セレモニー」もまた、団員達や事務局スタッフにとって大切な時間となっていました。

団員達が集まれない状況ではありますが、
今期を締め括り、卒団生を見送る機会を何とかをつくりたいと考え、
福島公演をやるはずだった3月29日に、ビデオ会議ツールを利用した「リモート卒団式」を行いました。

このレポートでは、式次第に沿って卒団式の様子をお伝えしたいと思います。


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東北ユースオーケストラ第5期卒団式 式次第

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1.開式の辞

TYO東京事務局の田中宏和事務局長が卒団式の司会を務めました。


2.第5期卒団員紹介

大学を卒業し、4月から社会人になる5名の卒団生の紹介がありました。

阿部秀捷(チェロ)
磯貝雛子(ホルン)
大波さくら(トロンボーン)
狩野諒也(ホルン)
筒井温之(トロンボーン)

の5名が卒団となります。


3.押木正人代表理事式辞

一般社団法人東北ユースオーケストラ 押木正人代表取締役社長に式辞を頂きました。

「東北ユースオーケストラ第5期107名の皆さん、1年間活動大変お疲れ様でした。
2011年の3月に発生した東日本大震災の復興のために立ち上がった東北ユースオーケストラの活動が
今回は、コロナウイルスという目に見えない脅威にさらされて、
ここまで練習をしてきた成果である3つのコンサートができなくなってしまったこと、本当に残念に思っています。

在団の皆さん、今日は本当に笑顔で出てきて頂いていますけれど、
どんな思いで今日を迎えていらっしゃるのかと思うと、堪えられない気持ちです。
これまで東日本大震災を乗り越えてきた皆さんですので、
この1年間努力したことがこんな形で終わる悔しさを是非バネにして頂き、
明日に向かう力に変えていって頂きたいと思っています。

小学校4年生~大学生まで、12歳のひらきがあるメンバー、
小学生、中学生、高校生、大学生が一緒に活動する経験は、通常の学校生活では経験できないことだと思います。
ユースオケという集団活動で、小学生の人が20代の大学生が学ぶことはもちろんのこと、大学生も、小学生を生活や演奏面でサポートすることで、学ぶことも多くあったかと思います。
毎月の練習、また夏合宿を通じて、幅広い年齢層の皆さんが1つになれたことは各個人にとって、生涯忘れることのできない経験になると確信しています。

今年は皆さんの若々しい力の満ちた演奏を、東京・福島の大ホールで聴いてはもらえませんでしたが、

理事になって頂いております岩手日報社、河北新報社、福島民報社、各社の新聞に多数の記事を掲載頂き、
また熊本ユースシンフォニーオーケストラとの共演は、NHK BSでの特集で取り上げられ、
他、婦人画報等の雑誌など、マスコミにも多く取り上げられたことで、
皆さんが今年も元気に活動されていることは、被災地の皆様にも伝わったのではと思います。
日本や世界で、東日本大震災をいつまでも記憶に留め風化させない役割と
将来を担う若い世代が音楽を通じて創造性を発揮し世界に発信するという、
東北ユースオーケストラの目的は十分に果たせたのではないかと思います。

また今年は、日本青少年文化センター様から、青少年の文化の発展に貢献した人や団体を表彰する、
59年も続いている歴史ある「久留島武彦賞」を頂きました。
震災直後から立ち上げた「子どもの音楽再生基金」をスタートに、
今日まで長きにわたり復興支援に努めてきた坂本龍一さん、栁澤寿男さん、事務局・関係者の皆様、
活動を支えて頂いたスポンサーの皆様の貢献、団員を陰でサポート頂きました保護者の皆様、卒業した団員も含め、
多くの方の活動が世間に認められたことと大変うれしく思っています。

今日で卒業される5人の皆さん、長い間お疲れ様でした。
これで東北ユースオーケストラの活動からは離れますが、私からのお願いは、
音楽を通じた人と結びつくことの意義、大切さを忘れず、
楽器演奏を今後も是非続けていって欲しいと思います。
また、6期も続ける皆さんは、今年度練習した曲にさらに磨きをかけて2021年に演奏できるように新年度も継続して練習していきましょう。

本日の卒団式で、皆さんで今回の活動を振り返って、親睦を深められたらと思っております。1年間の活動本当にお疲れ様でした。」


4.坂本龍一代表・監督祝辞

「今日のこの時間、福島公演をしているはずでしたよね。本当に残念です。
早くこの活動を再開できる日が来れば良いと思っています。」

「卒業する5名の皆さん、おめでとうございます。
これまで貴重な経験をしたと思うので、是非ここで得た経験をこれからの長い人生に生かしてほしい。そして、音楽をずっと忘れないで生きていって欲しいです。」

「第九はもちろん、5年かかってやっとできた僕の新曲を皆が演奏しているのを聴けなかったこともとても残念です。
来年は実現できるようにしたいと思っていますので、卒業する5人も聴きに来てほしい。時間が合えば是非一緒に参加してください。」

「将来世界史的な事件になるであろう、今のこの時間を
皆さんが生きていることは本当に特別なことだと思うので、無駄に過ごしてほしくない。どうやって生きるべきか考えて過ごして欲しいと思います。」


5.祝辞(指揮者:栁澤寿男)

「第5期東北ユースオーケストラ卒団生の皆さん、卒団おめでとうございます。
直接皆さんにお会いできないことを本当にさみしく思っています。
我々の原点である東日本大震災に続いて、
これもまた我々の世代が体験する人類上危機の最大級のものかと思っています。

東北ユースオーケストラで何度もお伝えしたように
オーケストラは共同作業です。1人1人が責任を果たさないと成立しません。
世代を超えて培った東北ユースオーケストラの活動が、皆さんが社会に出たときに少しでも役に立つことを願っています。
会社や組織で見知らぬ人たちと、世代を超えて協調していくことはとても大変だと思います。
私自身も国内・海外で、その場に協調していくことに苦労し、悩みぬいた時期もありました。
そんな時は音楽を聴いてみてください。心穏やかに、冷静さを取り戻してみてください。
それから、東北ユースオーケストラのメンバーや、大人たちにも是非相談してみてください。
我々はいつでも東北ユースオーケストラにいます。
いつか皆さんと会える日を、そして一緒にハーモニーを奏でられる日があることを楽しみにしています。」


6.関係各社様からのメッセージ紹介

関係各社の皆様から頂いたメッセージを、田中宏和事務局長が代読しました。

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■デジタルガレージさま

凹んだボールは元に戻る。
怪我をした傷はいずれ癒える。
震災を乗り越え生まれた、東北ユースオーケストラは
若くしなやかな感性と、美しい音楽の力が、
心の復興に大きな力を与えてくれることを
私たちに教えてくれました。
これからもますます、東北を、日本を、世界を
元気にしていって欲しい。

デジタルガレージは、
東北ユールオーケストラを応援しています。

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■JA共済連全国本部さま

このたびは、ご卒団誠におめでとうございます。
東日本大震災から9年、復興はまだ道半ばではありますが、
これまで皆さんが東北ユースオーケストラの活動を通して見せてくれたひたむきな姿に、
心励まされた方がたくさんいると思います。
「助け合い」は、誰かの手が差し伸べられるのを待つだけでは実現されません。
皆さんが東北ユースオーケストラの活動を通して得たすべての経験が、
次なる世界でも大いに発揮されるとともに、「誰かを想う」気持ちの輪が広がっていくことを私たちJA共済も願っています。
そして何より、ご卒団される皆さんのこれからの人生が輝かしいものとなることを心よりお祈りしております。

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■JA共済連福島さま

東北ユースオーケストラ団員の皆さま、ご卒団誠におめでとうございます。
今般、演奏会が中止となり、皆さま方は大変悔しい思いをしていることと存じますし、心中察するに余りあります。

しかしながら、この一年間、団員の皆さんは、この活動を通して多くのことを学び、そして成長したことと存じます。いつか、皆さんの音楽表現を通じて、東北の人々に思いを届ける機会があることを、関係者としましても望むところです。
どうか、気を落とすことなく、そして、負けることなく、それぞれの道をお進みいただくことを切に願っております。
今後の、皆さま方のご健勝を祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。

JA共済連福島 本部長 服部道夫

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■福島トヨペットさま

卒団される皆様の長年の音楽
活動に心から敬意を表します。
この貴重な体験を、今後の人生に
おおいに役立ててくださいますよう、
心から祈念申し上げます。
団員の皆様、来春の福島公演を
心待ちにしております。
福島トヨペット株式会社 代表取締役社長 佐藤修朗

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■福島民報社さま

卒団される皆様のこれまでのご苦労に
心からの敬意を表します。お疲れさまでした。
今回の公演中止で、団員の皆様は誠につらい思いをされたことでしょう。
しかし、皆さんならこの試練を受け止め、
音楽活動への思いを新たにされたことと思います。
坂本監督、栁澤さんのアドバイスのもと、
いっそう飛躍されますよう祈念いたします。
来春の公演はぜひぜひ、成功させましょう。
福島民報社は全面的に応援させていただきます。

福島民報社代表取締役社長 高橋雅行
東北ユースオーケストラ理事兼福島民報社
取締役郡山本社代表 荒木英幸


7.送辞(第5期キャプテン)田嶋詩織

「卒団される皆様、卒団、そしてご卒業おめでとうございます。
今回卒団式がこのような形になり、直接お祝い出来悲しく思います。

皆さんと活動した時間はとても楽しく、また刺激的であり毎回の練習が待ち遠しく感じていました。
今回取り組んだ第九でも1年前から坂本監督が被災地を繋ぐ演奏会の開催を大きく掲げ、実現できるのかという不安を感じた事もありました。しかし5期の活動が始まりメキメキと成長し今までには無いくらいの速さで完成が見えました。
また東北ユースオーケストラの特色でもある世代の広さを越え、交流を深める姿を目の当たりにし東北ユースオーケストラのあるべき姿を強く実感しました。

このように東北ユースオーケストラが成長できたのも皆さんが今までの経験を生かし年長者として見守り、支えてくださったからこその成長です。
私たちも皆さんの姿を忘れず、今後の東北ユースオーケストラの活動が充実したものになるよう努力して参ります。

本番は中止になってしまいましたが、皆さんと一つの目標にむかって頑張った事や、全員で楽しく活動できたという事実は決して無くならないと思います。
また皆さんと共に、5期のメンバーでの演奏が実現できる事を心待ちにしております。
最後になりますが卒団される皆様のこれからのご活躍を団員一同お祈り申し上げます。

第5期キャプテン・田嶋詩織」


8.答辞(第3・4期キャプテン)磯貝雛子

「本日は事務局の皆様をはじめ、多くの団員の皆さん、OBOGの皆さん、押木代表理事、柳沢さん、そして、坂本龍一監督のご臨席の元、この様な卒団式を催して頂いたことに、卒団生一同、心より御礼申し上げます。また、キャプテンの田嶋詩織ちゃんの送辞のお言葉を賜りましたことに、重ねて御礼申し上げます。 

この数年間、東北ユースオーケストラでの時間は瞬く間に過ぎて行きました。入団したばかりの頃はみんなに馴染んでいけるか不安で、練習に行く前日は不安になる時もありました。しかし、卒団されていった先輩方や団員の皆さんが暖かく接して下さったので、いつの間にか練習に行く事が楽しみになっていました。

東北ユースオーケストラの活動の中で特に印象に残っているのは、有志演奏会です。地元の会津若松市以外の、写真やテレビでしか見た事がなかった被災地の様子を見て、東北の今を知る事ができました。悲しい事があったにも関わらず前を見て進んでいく方々を見て、私も日常があるという事に感謝して日々を過ごしたいと強く思いました。

時には、音楽性のすれ違いで衝突し合う事もありましたね。でもそれは、今思えば音楽に対して全力でぶつかっていたからなのだと思います。皆さんの熱い思いと柳澤さんのご指導があったから今までの演奏会はエネルギーに溢れ人の心を動かしていたのだと感じます。

そして、私はこの東北ユースオーケストラで得た宝物があります。それは友達です。私達は東北ユースオーケストラがなければ恐らく出会う事はなかったでしょう。毎月の練習、温泉合宿や直前合宿、東京公演、地方公演は一生忘れられません。多くの方から差し入れを頂き、みんなでタピオカを飲みながらお菓子を食べましたね。坂本龍一監督を囲み、みんなでBBQをした事は本当に大切な思い出です。

今年はコロナウィルスによって残念ながら本番がなくなってしまい、悔しい涙を流しました。来年はこの事態が収まり、演奏会ができて欲しいと祈っております。その時はぜひお手伝いに行かせてくださいね。

在団する皆さん、今まで私たちを支えてくださり本当にありがとうございました。皆さんと過ごした日々はかけがえのない思い出となっています。いつまでもこのオーケストラで音楽が出来るような気がしてしまいますが、卒団はあっという間です。毎回の練習を大切に日々過ごして下さい。あと、音楽に没頭しすぎると、勉強が疎かになってしまう人もいるようです。単位と相談しながら音楽に励んで下さい。

最後になりましたが、私達をサポートしてくださった押木代表理事を始めとする関係者の皆様、OBOGの皆さん、指揮の柳澤寿男さん、事務局の皆様、坂本龍一監督に卒団生を代表しまして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
これから私達はそれぞれの進路に向かって一歩一歩自分の足で歩いていきます。もしこの先大きな壁にぶつかったとしてもこの東北ユースオーケストラで得た多くの思い出、学び、誇りを人生の糧とし力強くいきていきます。本当にありがとうございました。東北ユースオーケストラの益々の発展を心より祈念して答辞と致します。

令和2年 3月29日
磯貝 雛子」


9.閉会の辞

田中宏和事務局長から閉会の辞があり、卒団式が終了。


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そしてそのまま、リモート卒団式の後は、リモート懇親会を行いました。

ここからは卒団生以外の団員もビデオをONにして参加です。

懇親会の中では、坂本監督から団員達へ、今の時期にふれてほしい本や映画の推薦リストが共有されました。

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坂本龍一代表・監督推薦。

今だから味わいたい、本と映画。

<本>
工藤進「日本語はどこから生まれたか」
福岡伸一「新版 動的平衡」
ロヴェッリ「時間は存在しない」
マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン(斎藤幸平・編)「資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐」
斎藤成也「日本人の起源」
エンデ「モモ」
カーソン「沈黙の春」
手塚治虫「火の鳥」
リルケ「ドゥイノの悲歌」
島泰三「はだかの起源」
カミュ「異邦人」
カフカ「審判」

<映画>
小津安二郎「東京物語」
フェリーニ「道」
黒澤明「デルスウザーラ」
タルコフスキー「ストーカー」
https://www.youtube.com/watch?v=TGRDYpCmMcM
侯孝賢「非情城市」
宮崎駿「風の谷のナウシカ」

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家の中にいる今のうちにたくさんインプットをして音楽の肥やしにしてほしいと思います。

そして、画面越しの5本締めでリモート懇親会が終了しました。

この状況が落ち着き、また東北ユースオーケストラ皆で集える時を待ちたいと思います。