REPORT

2019.01.23

第8回合同練習会のレポートです。

第8回合同練習会のレポートです。

1月19日の土曜日、20日の日曜日と二日続けて福島市で合同練習会を行いました。冒頭の写真は宿泊組がお世話になった「ホテル」(というより「旅館」の味わい)の玄関に掲げていただいた歓迎看板。我ら「東北ユースオーケーストラ」です。

いつも合同練習会場にお借りしている福島民報社のホールは、結婚式場として使われることもあるようで正式には「ロイヤルホール」と言います。そのためステージの緞帳にはデカデカと歌舞伎の連獅子が配されており、異形な存在感を放っています。今回のレポートでは随所に写り込んでいますので、むしろ隠れキャラとしてお楽しみいただければと思います。初日のオリエンテーションを事務局の岡田直美さん、飯島則充さんとの風景も、連獅子を背負って見るとじわじわ可笑しい。

この連獅子の前ではどんな人でも二人で立つと面白い構図に見えてしまうから不思議です。

飯島テクニカル・ディレクターから2019年度の活動計画について発表してもらったら、団員から「えー!」「わー!」という声が挙がりました。まだ公表できないのですが、今年の3月の演奏会に向けて団員は必死に練習しているところ、その次の2020年3月の演奏会はかなり豪華な内容になります。乞うご期待ください。

団員からの連絡コーナーでは、クラウドファンディング係の橋本果林さんがサポーターズクラブの会員向け返礼品としてのメールマガジンの紹介をしてくれました。

この日はメルマガを出力してファイルにして持って来てくれたのですが、とある団員曰く、「建築現場の図面」みたいな装丁はこちら。

しかし、その内容は各パートが順送りで毎週レポートをお届けする、東北ユースオーケストラのインサイダー情報に満ちた楽しい内容になっています。

こちらはヴィオラ担当の回です。

ついでにチェロパートの回も。

さらにコントラバス担当の回です。

というように月額800円のTYO有志演奏会サポーターズクラブにご加入いただけますと、このようなメールマガジンが毎週金曜日に届きます。団員の自主運営による有志演奏会を継続支援していただきたく、ぜひご入会をご検討ください(現在、まだ7名です・・・)。お申し込みはこちらから。

1月の合同練習会の初日は栁澤寿男さんのご指導による合奏練習です。

午前中は初めて演奏する坂本龍一監督作品の「Blu」と藤倉大さんによるこちらは3回目の演奏となる「ThreeTOHOKSongs」の練習を行いました。

昼休み前には朝から練習に立ち会っていただいている代表理事の押木正人さんにご挨拶いただきました。

押木さんはヤマハミュージックジャパンの社長でありながら、ヤマハ吹奏楽団の団長も務められており、団員を温かく激励しながら「被災地だけでなく、日本全国を元気にする演奏を」とのエールを送っていただきました。

昼休みに入っても、栁澤さんの居残り練習を受ける団員もいます。

クラリネットの樅山瑞歩さんとオーボエの渡邊叶華さん。とても精妙なニュアンスを指導を受けてチューニングしていました。

午後の練習には東北ユースオーケストラ初の委嘱作品をご依頼した仁科彩さんに仙台からお越しいただきました。   冒頭、楽曲の演奏形態・内容をすこし変更したいのでその説明をします、とお話いただきました。

団員が月一回の合同練習会になかなか全員揃うことができずという事情を把握しきれず(この日もインフルエンザやセンター試験などのため欠席者が目立ちました・・・)、しかしながら団員の楽器編成をフルに使った楽曲にしようとしていたことに無理があったので、3月の本番までに現状の新曲を発展させていくのはむつかしいと判断しましたとご説明されました。

昨年末の合同練習会で行った現代音楽の作曲家である藤倉大さんのワークショップで団員が演奏した、アメリカの作曲家ポーリン・オリヴェロスの『チューニング・メディテーション』 がとても美しい響きだったことがヒントになったそうです。

みんなで一つのサウンドスケープをつくろうという作品になりますと楽譜の説明になりました。

新曲『くぐいの空』の楽譜は、演奏前の心構えからはじまります。くぐいとは、東北に冬の間にやって来るオオハクチョウの渡り鳥のことです。

「演奏をはじめる前に、3秒間、あなたのお好きな東北の自然風景を思い浮かべてください。光り、匂い、肌触り、そこにどんな景色がひろがっていますか?
くぐいたちと一緒に、のびのびご飯を食べて、春、あの大きな空を羽ばたけたなら、どんな世界が見えるかな?」

この作品は、仁科さんが事前に作曲制作されたエレクトロニックなサウンドスケープの録音に合わせて、楽譜の指示に従い、団員が即興も加えながらアコースティックな音を重ねていくというものでした。

まずは仁科さんに用紙していただいた録音を団員が聞いてみます。

仁科さんからは、ひとりだけ悪目立ちして演奏するのは無し。みんなで音をブレンドして、ひとつのくぐいをつくりあげましょうね、とアドバイスがありました。

仁科さんの用意された音素材を流しながら、栁澤さんの指揮で音を合わせてみました。これは東北ユースオーケストラらしい若々しい実験精神に満ちた作品になりそうだぞとの印象を受けました。

一通りの演奏を終わった後で、仁科さんが団員にされた説明の中で「ピンチはチャンスを英語で言うと、わたしの好きな表現なのですが」とご紹介された慣用句があって、わたくしの耳が遠いのか、英語力が不足しているのか聞き取れなかったので、仁科さんに聞いてみたら、ご丁寧に五線紙の一筆箋に書き留めていただけました。

A Blessing in disguise !

東北ユースオーケストラの標語にしたいくらいです。仁科さん、どうもありがとうございました!

休憩時間にマスク姿の中学生コンビの仙台の鈴木南美さんと盛岡の北川里彩さんに、大学院生の千葉はづきさんが「わたしも中学生!」と肩を組んでいたら、栁澤寿男さんも写り込みに。

栁澤寿男さんも新生『くぐいの空』に手応えを感じられたのでしょうね。とてもリラックスされていたので、

「全員で中学生風でお願いします」と言ったら、

笑うと身体の抵抗力が増すと言いますから、これでインフルエンザウィルスも平気ですね。

こちらは有志演奏会係の福島の医療系大学に通うコントラバス渡邉晴香さんとチェロの中学生の石井葵子さんのお母さん。

渡邊さんかデザインしたチラシを家業が印刷会社の石井さんに無償で出力していただきました。石井さんのお姉さんは現在高校三年生で受験のため一年休団中ですが、石井さんファミリーにはTYO発足時からお世話になっております。いつもありがとうございます。

午後の残りの時間は、演奏会のメインの楽曲、ブラームスの交響曲第2番の練習。

初日の合奏練習が終わったあとも、演奏を続ける団員が。

有志演奏係の冨澤三兄弟、長男の悠太くんが腕組みして演奏をチェックしていました。無償の有志演奏とは言え、演奏のクオリティにこだわる。頼もしいですね。

練習を終えた三人が、「わたしたちの写真を撮ってください」というので何かと思ったら、

同じ宮城教育大学で今回の有志演奏会に参加する3人が、たまたま似たような色のクルーネックの服を着ていたと。偶然性好きのわたくしとしては喜んで記録した次第です。

この日は、翌日の練習にそなえ、福島在樹組以外の約30人は徒歩10分のホテルにお世話になりました。

ご飯をいただいて、しっかり寝れればいいわけでして、「ホテル」というより「旅館」のホスピタリティを期待していましたら、予想通りのこの趣き。

大宴会場で夕飯をいただきました。

いただきますの号令係は、最年少の今回演奏会のある盛岡市出身、田口陽大くんにお願いしました。

隣に座った冨澤長男が、「今日は思いきり食べます」(食費を気にせずに)と宣言して、ご飯を盛り盛りによそいはじめました。

横で黙ってカウントしていたのですが、結果5杯食べていました。インフルエンザの予防には大切かと思います。

ごちそうさまでした号令係は最後に食べ終わった、今は都内の音大生、ホルン担当の田嶋詩織さん。

ごちそうさまでした! この時点で18時40分。その後の時間は自由時間とし、希望者は同じ広間で懇親会を行いました。20歳以上はお酒飲んで良しのルールです。

こちら中学生の二人、盛岡市のチェロ齋藤玲利くんと仙台市のヴァイオリン木島悠太くん。

このパーカーの被りようには偶然性マニアとして写真に収めぬわけにはいきませぬ。

こちらは大学生が小学生、中学生団員に勉強を教える、東北ユースオーケストラらしい風景。

大学生の中には将来教員を目指している団員も多いので、よい訓練になりますね。

そんなことで、みんな思い思いに勉強したり、ゲームしたり、お酒飲んだりした翌日の朝食の集合時間は8時の5分前。

ま、こんなもんでしょう。

しかし、その後はしっかり揃って白い息を吐きながら練習会場の福島民報社に歩いて向かいました。

9時半からのオリエンテーションを行う前の時間を使って、朝から有志演奏会の練習です。

いつもはヴィオラを担当している村岡瞭くんがチェロに持ち替えて練習をしていました。

二日目は東京フィルハーモニー交響楽団の4人の方にお越しいただき、セクション練習を行うため、普段は練習に使わないレストランもテーブルを動かして即席練習会場に。

レストランの配置を変えずに原状復帰をあとで行うための慎重な場ミリであります。

そして、こちらはブラームスの交響曲第2番のセクション練習に参加しないヴァイオリンの面々中高大学生を仙台の大学2年生、日比野愛さんが懇切指導の輪が出来ていました。

優しいながらも「そこ、もっとしっかり弾こう」的な松岡修造氏を思わせる熱量があって、わたくしは「熱血!日比野塾」と名付けました。

その手前には盛岡の小学生の市川真名さん、中学生の岩淵莉奈さんに仙台の木島くんが自主練の輪が出来ていました。

本番が迫ってきてみんな目つきが変わってきたような気がしますね。

そして、セクション練習は、東フィルで活躍されているプロの先生に福島市までお出向きいただきご指導を受けることができました。

弦セクションは、夏合宿に続いてヴァイオリンの宮川正雪さん。

木管セクションのフルートさかはし矢波さんも夏合宿に続いてご教授いただきました。

打楽器セクションは、船迫優子さん。

そして、金管セクションは大塚哲也さん。

みなさん、これまでに何度もご指導いただいている先生方です。

この日は朝から夕方までしっかり教えていただきました。

15時過ぎに木管のメンバーが「先生がもう練習する曲が無いとおっしゃっています」と呼びに来たので、練習部屋を見に行きました。そうすると、今回の演奏会では演奏する予定ではない坂本龍一監督の「ラストエンペラー」でご指導をされていました。

「ここの3つの和音は中国の皇帝のコードです」「ここは黄色を思い浮かべましょう」と独特のイメージングで指導をなさいます。

さらに身振り手振りが加わって、

この時は、「頭の中、中華饅頭!」と叫ばれていました。

さかはし矢波さんのご指導には真剣さの中に必ずユーモアがあります。さらに残った15分ほどは先生へのQ&Aタイムとなりました。本物に触れることの大切さ、プロの厳しさについて真剣に答えていただきました。

なんでも『Three TOHOKU Songs』の掛け声の練習もしていただいたようで、「木管パートは一番うまくなったはずです」とのお言葉をいただきました。

東フィルの4名の先生方、お忙しい中を福島市までどうもありがとうございました。

二日間の練習が終わって片付けの後でも居残って練習するグループが。

本番の演奏会でのロビーコンサートの楽曲に熱心に取り組んでいました。

来月の2月は3回の有志演奏会を行えることができます。どれも東北ユースオーケストラの存在意義を再確認できる機会となります。

まずは3月の盛岡公演を前に岩手県初の有志演奏会を実現することができます。

日時:2月3日(日)13時~

場所:岩手県 矢巾町 やはぱー

 そして、東日本大震災で児童74人の犠牲者が出てしまった「大川小学校の悲劇」の場所、石巻市大川地区での震災の記憶を後世に遺すプロジェクトのイベントに参加させていただきます。


坂本龍一監督とも旧知の毎日新聞の記者、中島みゆきさんが支援されている活動で演奏の機会をいただけることになりました。

日時:2月10日(日)

場所:宮城県石巻市二子東集会所(石巻市二子3-24) 

模型展示と模型制作時に地域の方々から聴き取った証言をまとめた「大川地区ふるさとの記憶」記録集出版記念を兼ねたイベントでの演奏となります。


 もう一つ、福島民報さんのご紹介で、

日時:2月23日(日)11時~

場所:福島県 郡山市富岡町社会福祉協議会 お互い様センター

 現在、避難されてる方々は近隣の復興公営住宅や自主的にアパート等を借りるなどされて仮設住宅にはほとんどいらっしゃらない状況の中、定期的に集まられるお茶会の流れで、演奏出来る機会を作っていただきました。

このような場にお声がけいただけることに東北ユースオーケストラを続けていく深い意味があると思っております。今後ともぜひお気軽にお声がけいだければ有難い限りです。

長くなりました。

引き続き東北ユースオーケストラへのご支援をよろしくお願いいたします。