6月の第2回合同練習会のレポートです。
6月3日の日曜日の大安、SNS上では 数々 の結婚式写真がアップされた日に、最高気温31度の福島市で今年度第2回目となる合同練習会を福島民報ホールで行いました。
今年も指揮をお願いする栁澤寿男さんが、先日までのコソボでの公演から帰国され、今年度初登場されるや、眼ざとく新キャプテンの磯貝雛子さんが団員の誰よりも早く駆け寄りご挨拶をしていました。
その機敏な行動力を、今年度は団員全体に浸透させてもらいたいものです。
第四期からの団員にとっては栁澤さんとの初顔合わせ。
しかし、今年度のメインの楽曲の一曲である、ブラームスの交響曲第2番の楽譜に弦楽器メンバーが弓使いのボウイングの記号を入れていなかったことが発覚。急きょ午前中はパートに別れて、弦パートは楽譜に弓入れ作業となりました。
残る木管楽器、金管楽器、打楽器のセクションを対象に、栁澤さんの指導がはじまりました。
今年度はもっと音を遠くに飛ばすこと、より良い楽器の響きや音色を出すことを目指して欲しいとのお話し。
肺活量を増やすための体操をしようと、全員起立。
肺までたくさん空気を送り込むための身体の使い方を教えていただきました。その後は、管楽器と打楽器だけでブラームスの練習へと移りました。団員くらいの歳にはトロンボーン奏者だった栁澤さん、交響曲第2番のトロンボーンの名演はサー・ゲオルグ・ショルティのロンドン交響楽団での録音だというお話も出ました。
一方、弦楽器のみなさんはお昼休みに入っても、ボウイング付きランチのご様子。
引率のオジサンとしては、消化に悪そうな食べ方が気になって、思わず斜めの画角で撮りましたが、気休めでした。
こちら第一バイオリンは作業済みのようですね。
ボウイングならぬピースイングな方々。
この昼休みにインタビューしたい団員がいました。あらためて新年度を迎えるにあたりプロフィールのアンケートを取ったところ、前期から入団したクラリネットの大学4年生の高松彩香さんが福島県浪江町出身だとわかりました。それまでは実家がいわき市で、今は東京の音大に通っているので都内在住としか把握していなかったのです。実はフルート担当の菅野桃香さんも同じく東京の音大2年生で、実家住所のいわき市出身と思っていたら、この3月の東京オペラシティコンサートホールでの演奏会で菅野さんの作品発表の紹介にあたって、「実は私は浪江町の出身なんです」と自ら言ってきてくれました。なので、次の練習の機会に、浪江町出身の2人のインタビューをしたいと思っていたのです。
福島県浪江町(なみえまち)。東京電力福島第一原発に、一番近い場所で約4kmしか離れていない町。昨年の3月31日に避難指示が解除された町。この練習の翌日に町長が辞意を表明された町。
昼ごはんを食べた高松さんに話を聞きはじめました。
「311の時、どこで何をしていたか、から聞いていいかな?」
語り出す高松さんに、つい質問を重ねると応じて返してくれるので、また視点を変えて話題を広げると、次々とエピソードや感情があふれてきます。結局、13時の午後の練習開始には終わらず、「じゃあ、次の休憩時間に続きを聞かせて」と頼み、こころよく「大丈夫です。声かけてください」と言ってもらったものの、とてもではないですが、15分間の休憩では聞きつくせなかったです。
いつも団員のインタビューをする時は、しっかりみんなの眼や顔や動きを見て話を聞きたいので、記録用にパソコンは使わず(自分自身、話している時にキーボードを見て打ち込んでいる人に心地よい印象を持ちにくいもので)、しかし速報性を考えて、iPhoneのメモに「ふんふん、ちょっと待ってね」とフリック入力というスタイルを取っています。高松さんからの言葉が手に余るほどあふれ出過ぎるばかりか、とりわけ「(マス)メディアから出ている情報ばかりではなく、うちらから発信していって理解を深めてもらえたら」という言葉がひっかかりました。わたくし自身メディアとの仕事をすることもある身ですので、この日に聞いた話で体裁良くうまくまとめてアップするよりも、慎重に丁寧に東北ユースオーケストラの記録として公開したいなと思ったのです。あわよくばもう一人インタビューに応えてもらおうと思った菅野さんに「高松さんから聞く話がたくさんあり過ぎて、次の機会でもいい?」と尋ねたら、「もちろん大丈夫ですよ!」と間髪置かず明るい返事。きっと話したいことがたくさんあるに違いないと感じました。
ということで、東北ユースオーケストラの2人の浪江町出身団員インタビューはあらためて実施してご紹介したいと思います。
さて、昼休みに逆戻りします。練習会場の一角で 早々とランチを終えたメンバーが練習をしていました。
曲はビートルズの『オブ・ラ・ディ・オ・ブラ・ダ』。今月23日(土)13時からの南三陸町さんさん商店街での有志演奏会に向けての練習だそうです。
有志演奏チームのリーダー、佐藤ひかりさん、手拍子を打つ渡辺晴香さんが演奏を聴いてアドバイスをしてくれています。この曲は、"life goes on" 、「人生は続く」という意味ですから、いい選曲センスだと思います!
休憩時間には有志演奏会の告知用の写真撮影をしていました。
リーダーが寄って、「笑顔が足りない」という結論に。
6月23日の有志演奏会の参加者を撮影していた橋本果林さんにリスト化して送ってもらいましたので、ご紹介しておきます。演奏者は、Vn 鈴木七瀬、Vn 山崎優子、 Vla鈴木祥子、Vla 村岡暸、Vc 鈴木りな、Cb 勝田凜、Ob 須賀文栄、Ob 関根慧、Cl 黒須菜月、Cl 中山優貴、Hr 磯貝雛子、Hr 赤間奏良、Tb 福澄茉音、そして、引率、記録は冨澤悠太、渡辺晴香、橋本果林のメンバーとのこと。しっかり準備をして南三陸のみなさまの心に残る演奏になればと願っています。
さらにすでに7月の有志演奏会も決まり、近々クラウドファンディングをはじめますと報告を受けました。今年度は団員の自主的活動がさらに広がりそうで、なんとも頼もしい限りです。
さて午後の合奏をはじめるにあたり、栁沢さんから今年度の抱負や選曲について語っていただきました。
「今年は演奏する楽曲の全体の構造を理解して欲しいですね。昨年度までは各自が自分のパートだけを追って、なんとか音を並べるだけの演奏になっていました。全体の中の自分を意識すると同時に、管楽器の人は肺活量を鍛えるなどして個人としてより良い音を出すことも追求して欲しいです。
第三期まではやり切ることが精一杯だった。今期はそこから一歩踏み出して、一皮むけたものが出来ないかな、つくれないかなと思っています。五月からのスタートと、過去3年よりも早いスタートを切れたので、時間的な余裕もあります。」
「ブラームスの2番を演奏したことがある人は?」の問いかけに。
10名弱の団員の手が挙がりました。
「今回のブラームスの交響曲第2番の選曲は、坂本監督と相談して決めました。まず楽曲の構造がしっかりしている。構造をよく知って演奏して欲しいという願いに、ブラームスは構造がソナタ形式の構造がわかりやすいです。ソナタ形式って知ってますか?これまでに演奏したチャイコフスキー、マーラーもソナタ形式だったけど、わかりにくかった。ブラームスには構造の美学があります。ソナタ形式を知ることは、みんなの作曲のワークショップにもつながっていくと思っています。メロディーの展開を学ぶ上でブラームスは良いです。この第2番の「ターララ」の単純なメロディがどんどん展開していきます。人が作り上げた構造を理解することができます。序奏からはじまって、提示部の第1テーマ、第2テーマ、コデッタ(提示部終結部)、展開部、再現部、コーダと作品が出来上がる仕組みを知ることができます。さまざまな指揮者、オーケストラによる演奏が残されていますから、いろんな演奏を聴いて、テンポやリタルダントの違いを知って欲しい。」
ということで、今年度の東北ユースオーケストラの学習課題は、楽曲の全体構造の理解、構造の中でもソナタ形式の理解と示されました。
さっそくブラ2の合奏に取り組みます。
われわれ一同が注目したのは栁澤さんの右手。
なんと初めて指揮棒を持たれているではありませんか! 団員が誰も質問しないので、練習後わたくしが代わりに質問をしてみました。
「昨年度までは本当に音を並べていただけだった。指揮よりも早く出る人もいたりで、手だけを使ってみんなに指揮を合わせていたんです。今年は指揮棒を使って、コンタクトをしっかり取れるようにして、みんなに合せてもらいます(笑)」とのことでした。
団員のみなさん、今年は心して栁澤寿男さんの指導を受けてください。そして、個人練習もしっかりして合同練習に臨んでくださいね。
あ、それから写真を撮り忘れましたが、後片付けは全員協力でお願いしますね。みんなで使った練習会場ですから、みんなできれいに元に戻しましょう。
引き続き東北ユースオーケストラへのご支援をどうぞよろしくお願いします。