REPORT

2017.05.05

演奏会(東京・郡山)のレポートです。

演奏会(東京・郡山)のレポートです。

3日間の直前合宿を終えた翌朝7時には合宿地の千葉県館山を出発し、9時には 新宿区初台の東京オペラシティコンサートホール に到着、準備を素早く済ませ10時からリハーサルを行う。この慌ただしさが東北ユースオーケストラならでの演奏会です。サミュエル・ウルマンも"Youth is not a time of life-it is a state of mind; it is a temper of the will,“と詩を詠んでいるではないですか。

なにぶんユースのコンサートですから、ゲストのお歴々のみなさまにもご不自由をおかけしがちであります・・・。しかし、坂本龍一監督は準備万端ですよ。

胸に「東北」とあしらわれた大竹伸朗さんデザインのチャリティTシャツ着用で当日直前のリハーサルを待ち構えていらっしゃいます。

背中にはもちろん「ユースオーケストラ」の文字が。指揮の栁沢寿男さんと図らずものペアルック姿でリハーサルは順調に進んでいきました。コンサート本編が2時間半想定なので、リハーサルの予定時間もあっという間に過ぎ、昼食と着替えを済ませたらすぐに開場となります。
最初の出番は去年に続き導入した「影アナ隊」。本来なら司会者が舞台袖の影に隠れてアナウンスする「携帯電話をお切りください」「旗を振り回さないでください」などの諸注意事項を、わざわざ団員が舞台に出てお伝えするという演出であります。このパフォーマンスによって、出身や年齢の違う混成オケであることが伝わればという狙いではじめました。

キャプテンの仙台の大学三年生である畠山茜さん(ヴァイオリン)、岩手県盛岡市の小学五年生北川聖彩さん(ヴァイオリン)、仙台の小学六年生の鈴木南美さん(ヴァイオリン)、福島市の中学三年生山崎優子さん(ヴァイオリン)、宮城県大崎市の中学二年生西野蒼さん(トロンボーン)、福島県いわき市の大学二年生の橋本果林さん(コントラバス)のの以上、6名の影アナ隊です。それに続いて、福島市の中学三年生堤英純くん(パーカッション)が作曲した 、演奏会の幕開けを告げるファンファーレであるトランペット三重奏を演奏する仙台の大学生、 中村祐登くんと齋藤智子さん、そして盛岡市の高校三年生遠藤寛人くんが舞台袖でスタンバイ。

ちゃっかり齋藤さんの右隣に写り込んでいるのは盛岡の小学5年生、ヴァイオリンの北川聖彩さん。並んだ4人の頭頂は直線が引けそうな揃いぶりですね。そんなことはさておき、ついに開演5分前、楽屋袖には下手から入場する団員が集まってきました。

坂本監督からの話を聞いて、充分練習したぞという余裕なのか、今年は本番直前でもピースサインで応じるリラックスした団員達。頼もしい!

監督からハイタッチでステージへと送り出され、団員たちにも気合が注入されます。

一年前と同様オープニングの『ラストエンペラーのテーマ』」に続いて、今年は『八重の桜メインテーマ』を演奏。今年もMCの渡辺真理さんの淀みない的確な進行を挟んで、吉永小百合さんとの共演コーナーへと順調に進んでいきました。

この吉永さんとのパートでは、坂本監督自らがご自身作曲『母と暮せば』の演奏と朗読のタイミングを合わせるべく指揮を執られました。
今年もステージ上での吉永小百合様の「おじゃま虫かもしれないけど、ちょっとでもこの会に参加させていただきたい」 の有難さに手を合わせて頭を垂れる他ないご発言がスポーツ新聞各紙の記事になりました。「おじゃま虫」だなんて、とんでもありません! こちら日刊スポーツスポーツ報知サンケイスポーツデイリースポーツ、の記事のリンクを張ってみました。
続いて、うないぐみさんとの沖縄民謡『てぃんさぐぬ花』、坂本龍一作曲「弥勒世果報」、さらに団員の地元三県の民謡である「大漁唄い込み」「南部よしゃれ」「相馬盆唄」のメドレーを今世界の注目を集める現代音楽作曲家の藤倉大さんが編曲の『Three TOHOKU Songs』。この一連の流れで日本の音楽の古層を表現する「ヤポネシア(©️島尾敏雄)パート」です。今回、この沖縄と東北をつなぐ音楽を演奏してみて、これから東北ユースオーケストラの音楽性をどう発展させていくのかという問いに対し、いくつかあるはずの解の一つが見つかったような気がしました。

場内は15分の休憩、しかし、団員は次の準備です。今年の演奏会のメインの楽曲であるグスタフ・マーラー作曲交響曲第1番「巨人」の演奏です。団員からの演奏してみたいというリクエストに応えたものの、半年前の練習当初は「これは人様にお聞かせできるレベルになれるのかな」と疑問符が脳内をマスゲームするほどで、前月の練習でも「途中で止まるのが怖い」と指揮の柳沢寿男さんにお言葉頂戴するほどの難曲。いや、ユースオケ、ジュニアオケで演奏するのがチャレンジ過ぎるのですけどね。しかし、"Youth is not a time of life-it is a state of mind; it is a temper of the will,"ですよ。

第二部の出番前、グスタフ・マーラーさんのスコアの指示通りに「バンダ」の準備をする3人がいました。「バンダ」とは「主となる本来の編成とは別に、多くは離れた位置で「別働隊」として演奏する小規模のアンサンブル」と、わたくしも今回の演奏会ではじめて知りました。もっと知りたい善男善女はこちらをお読みください(としか言えない・・・)。

開演前のトランペット・ファンファーレ三重奏メンバー二人に、岩手県盛岡市の中学一年生藤田サーレムくんが入って「バンダ」を奏でます。

心配そうな「ギリシャの女神みたい(©️坂本龍一)」な衣装の渡辺真理さんたちをよそに、清々しいラッパの響きを鳴らしてくれました。

栁澤さんの指揮には「今が本番なんだぞ」と団員にレーザービームを飛ばすような静かな情熱が込められていました。途中で止まりやしないかとひやひやしていたわたくしは写真を撮ることもできず、TYOのオフィシャルカメラマン丸尾隆一さんによる「マラ1」演奏中のショットを挿入いたします。

50分を超える大曲、難曲の演奏を滞りなく見事終えることができました。場内からの拍手が舞台袖にも大きく聞こえてきます。「ブラボー」「ブラボー」という掛け声までも、何人からも。歓声に応え、団員がすっと立つ姿に眼汁がこぼれました。引き合いに出すには申し訳ないですが、舞台袖からの「Slightly Out of Focus©️ロバート・キャパ」な写真です。

アンコールは、311直後に立ち上げた「こどもの音楽再生基金」での演奏会から続いている、坂本龍一監督作曲『ETUDE』の演奏でお客さんからの手拍子で会場が一つになって盛り上がり、たくさんの気持ちのこもった拍手をいただいてエンディングとなりました。

終演後の囲み取材には坂本監督、畠山茜キャプテンの他、左に福澄茉音くん、右に遠藤寛人くん、遠藤梨々花さんがそれぞれ各県を代表して受け答えしてくれました。この様子も含めていくつかの記事で取り上げられました。“坂本龍一、東北の学生オーケストラと共演 復興支援に決意新た「しつこく忘れない」 ”“ 坂本龍一さん代表のオーケストラ 演奏に称賛の声 ”“ 今年も盛況 「東北ユースオーケストラ」演奏会(動画あり) ”などです。

今年は昨年と違い、二日連続の公演。団員は本番終了するやいなやバスに乗り込み、その日のうちに福島県郡山市まで移動しました。つまり1日2食がお弁当。売れっ子芸人のような生活を疑似体験するのも東北ユースオーケストラならではです。

郡山市民文化センターでは、市のキャラクターがくとくんがお出迎え。郡山市は「東北のウィーン」を標榜する音楽で地元を盛り上げようという自治体なのです。

昨日東京で本番を終えたばかりですので、今日のリハーサルは前日の修正箇所を中心にテンポよく進んでいきました。

一通りゲストパートのリハーサルが終わったタイミングで、畠山キャプテンから「お時間をください!」との申し入れが。なんと共演者全員に対して感謝の寄せ書きを渡したいとのこと。みんな、事の貴重さ、有難さを理解してくれているようで、引率の先生はうれしかったです。こちらは、うないぐみさんへの贈呈シーン。この日うないぐみさんが郡山駅からタクシーの乗ろうとしたら、ちょうど沖縄祭りをやっていたそうなんです。沖縄では県民全員参加的な行事のエイサーの踊りは、福島県内の「じゃんがら念仏踊り」がルーツだったというエピソードが紹介されました。

ついどんな寄せ書きの内容かと気になって写真に撮ってみましたよ。

リハーサルを終えて、東京と福島の事務局メンバーやスタッフも含めて全員で記念写真を撮りました。

ここ郡山市民文化センター大ホールは、その名の通り大きなホールで、観客席が2,000名弱と前の日の東京オペラシティコンサートホールよりも多く、当初はたしてお客さんは埋まるのだろうかと心配していました。しかし、地元で演奏したいという団員の想いに応え、一般社団法人東北ユースオーケストラの理事メンバーでもある福島民報社さんが会社の125周年事業として、この郡山公演を主催事業にしていただくことで実現ができました。

これは演奏会前に2回、福島民報に掲載された新聞紙面全ページのPRです。おかげさまで郡山公演は満員御礼となりました。またロビーでは協賛社のJA共済さんのご配慮で今年度の活動を紹介する写真パネル展が行われました。

さらに団員たちの意気込みを書いた寄せ書きも展示されていました。

さて続々とお客様が来場されはじめ、郡山公演の影アナ隊の出番です。

昨日から二日連続の畠山茜キャプテン以外は全員郡山市在住団員で固めてみました。左から福田大真くん(小5、ヴァイオリン)、佐久間莉那さん(中1、チェロ)、石井莉子さん(中1、チェロ)、丹野裕理(高2、コントラバス)芦名礼佳さん(高2、チェロ)。故郷に錦を飾る晴れ舞台ですね。
続いてのトランペット三重奏のファンファーレ。

舞台袖には二日目でさらにリラックスした団員たちが集まってきました。

さぁ、今日も坂本監督の団員送り出しで開演です。

吉永小百合さん、うないぐみさんとの共演の第一部は順調に済んで、休憩を挟んでメインの楽曲であるマーラーの交響曲第1番です。

さてさて地元の慣れ親しんだみなさんの前で止まらず演奏しきれるのか、今期の活動の集大成にふさわしい演奏はできるのか。栁澤さんも思わず蝶ネクタイに手を触れて気合い充分の出番前です。

第一楽章の演奏が順調にはじまって、舞台袖で控えている身としては「とにかく演奏が止まってくれるな」と、高校野球で満塁のシーン、フォアボールで押し出しが出ませんようにと祈る気持ちに近いんですね。
出番ではない坂本監督も楽屋で休むことなく、舞台袖でずっとリズムを取りながら見守っていらっしゃいます。

昨日よりもさらに演奏が良くなっているではありませんか。若い人たちの成長力って凄いもんだな。そういえば自分も中学時代に毎日のように背が伸びてるような時があったよなとしみじみしておりましたら、第4楽章の終盤に差し掛かり、見事に演奏を終えました。

吉永小百合さん、渡辺真理さんも舞台袖から拍手です。そして、今年の東北ユースオーケストラ演奏会、最後の曲は『ETUDE』で坂本龍一監督と共演でエンディング。

しばらく会えないねと郡山市民センターでソフトドリンクを飲んでしばし談笑、懇親をして、締めでみんなで記念撮影しました。

この子供も大人も和気藹々が東北ユースオーケストラならではですね。
さっきまで演奏していた舞台も撤収が済んで、もぬけの殻に。

しみじみと「無事演奏会も終えることができたな」と感慨にふけっていたら、「楽屋に財布の忘れ物がありました」とのこと。中身を見たら運転免許書に「冨澤悠太」と犯人即判明。東北ユースオーケストラのお家芸である忘れ物ですね。

事務局のお姉さんこと岡田直美さんに平謝りしながら恭しく受け取る、冨澤くん。今年もよくいろんな手伝いをしてくれました。次年度は忘れ物に注意しよう。

冒頭に引用したサミエル・ウルマンの詩「YOUTH」の続きです。

Youth is not a time of life-it is a state of mind; it is a temper of the will,a quality of imagination, a vigor of the emotions, a predominance of courage over timidity, of the appetite for adventure over love ease.

「青春とは人生の一時期のことではない。青春とは心の状態のことである」で始まる詩は、「青春とは、意志の性質であり、想像力の質であり、感情の勢いであり、臆病さを乗り越える果敢な勇気であり、易きに流れない冒険への嗜好なのである」

第2期の活動を終え、東北ユースオーケストラがこのような気概で続いていければと思う次第です。

関係者のみなさま、誠にありがとうございました。今年度も第3期の活動を今月くらいには新規団員募集からはじめる予定です。引き続きご支援をお願いいたします。