REPORT

2017.02.27

25、26日と福島市で合同練習!

25、26日と福島市で合同練習!

来月の東京、郡山での公演までちょうど1ヶ月となりました。
今月の練習会場は東北ユースオーケストラ(TYO)はじめての福島市公会堂です。こちら、1200名以上を収容する歴史ある福島市のホールに続々と団員が集まってきます。

あとは本番前の直前合宿での練習を残すのみとなりました。気合が入ってきた指揮の栁澤敏男さんには後光が刺しているようです。

とりわけ「ふつうジュニアオケ、ユースオケではまず演奏しない(演奏できない)」と言われるグスタフ・マーラーの交響曲第1番については、楽譜のポストイットも毎回増えていっているように感じます。

果たして立派に演奏できるのかなという現況を応援するかのように今日はたくさんの差し入れをいただきました。まずはパーカッション塘英純くん、ヴァイオリン三浦千奈さんのお母さまからバラエティに富んだお菓子の数々と、そして福島事務局の大塚真里さんからお薦めの地元福島市の「ゆずみそ焼おにぎり」(と書くだけでも、さらにどんぶり飯を食べれそう)。

そして、この二日間の合同練習会ではJA共済、JA共済連福島から多大なるご支援をいただきました。今回のレポートでは結果的にこれから何度も「JA共済」という言葉が踊り、画面に写り込むことになり、「この引率の先生は個人的に何か貰っているのでなかろうか」と訝しがられること間違い無いと思うのですが、確かにたくさんの恩恵をいただいているのですよ、東北ユースオーケストラ一同が!

まずは小出しに。初日の昼と長い練習の間食用にと、地元でつくられたパンを各種とお茶を110名分いただきました。

ホール内では午前中からマーラー交響曲第1番を絶賛練習中のところ、

かたや降り番中学生、トロンボーン西野蒼さんとクラリネット小野葵さんの、ダブル・ノアオイズが何を嗅ぎつけたかロビーに登場。

中学生というのは、とにかくお腹が空く年頃だよなと受け止めておりましたら新たなJA共済さんからの差し入れが届きました。

「水虫パン」です。事前にいただいた贈答品リストに「お茶」「お弁当」「トースト」などに混じって「水虫パン」という物品を見つけた時のわたくしの衝撃をお察しください。何かの誤植であろうとたかをくくっていたら、本当に「水虫パン」が作り手の「オカザキドーナツ」店主岡崎隆一さん(75)によって、自転車にて納品されるという、想像を超える現実の恐ろしさを感じました。しかもJA共済さんは自社製品では無く、地域振興の観点から地元の商品をわざわざ買ってくださったのですね、この水虫パンを。まさに足型の水虫パンは、ピーナッツバター味、イチゴジャム味、チョコレート味とバラエティに富んでおり、水虫に見立てられたと思わしきカリカリ部分の食感が絶妙な、昭和生まれには懐かしい美味でありました。水虫パンについてさらなる見聞を広げたい向きには、一般社団法人東北ユースオーケストラの理事メンバーでもある仙台の河北新報の記事をお薦めします。
以上、福島市観光情報でした。

この日は実家で栽培、販売されている苺の差し入れとともに練習会場にお越しいただいた、今年70歳の男性がいらっしゃいました。

気仙沼から娘さんの車でお見えになった、古希の方の名刺には、
「NPO法人海べの森をつくろう会 副理事長 三浦秋男」と書かれています。
先月のレポートをお読みいただいていたらピンとおわかりかと。パーカッションの三浦瑞穂さん(中3)のお爺様でした。

まずは311に気仙沼で地区の自治会長をされていた、元高校教師の三浦秋男先生から昼休みの後半30分を使って団員全員に向かってお話をしていただきました。
これまでに体験したことの無い強い長い揺れで、障子が外れ、目の前で家の壁が割れ、町の信号機がすべて消えた驚き。ラジオから6mの津波との報せが入り(実際は気仙沼では20mを超えた)、海岸沿いから軽トラックに乗ったご夫婦が「津波が来る!」と逃げてきて、それが現実に起こることとわかり、日頃の防災訓練に則って行動されたこと。指定避難所の階上(はしかみ)中学校での避難生活がはじまり、地元の建設業者の大型発電機のおかげで直後から電気を得られたこと、意外とガス炊飯器が活躍したこと、地元農協が提供してくれたお米も2000人の避難民ではあっという間に無くなってしまったものの昔ながらの精米機のおかげで米が食べられたこと、地元の水産加工場の保冷庫のおかげでマグロ、ぶり、ほたてなど贅沢な食材も口にすることができたこと、10日後に自衛隊からの食事を支給されてほっとしたことなどなど。


強く強調されていたのは、日頃からの小中高校での避難訓練の重要性、防災教育の大切さでした。防災減災の3ステップとして、まずは自助、そして共助、公助と言われるが、地元コミュニティの共助の力を今回は強く感じられたそうです。震災後6年経っても仮設住宅は残っており、地区によっては自治会が解散したり統合を余儀なくされている場所もある。被害はまちまちで家族8人で高校生の娘さんだけが生き残った家もある。最後に三浦さんがおっしゃった言葉が響きました。「生かされたわたしの使命は地元のコミュニティを立て直し、守ることです」
こないだのお孫さん瑞穂さんの言葉「生かされたなりのことをしなくちゃいけない」とも共鳴する、限りある命を捧げたいという静かで強い意志。お二人の記念写真を撮りました。

今回三浦瑞穂さんのお爺様にお越しいただいたのは、311の貴重な体験談だけではありませんでした。実は三浦秋男さんは別の先生でもあったのです。


さて続きです。気仙沼のパーカッション三浦瑞穂さん(中3)のお爺様、元高校教員の三浦秋男さんは、なんと民謡の先生でもあったのです。前回の合同練習会で、今回の演奏会で披露する東北三県の民謡をアレンジした「ThreeTohokuSongs」練習中に、団員たちがあまりに地元の民謡を知らないので、掛け声をどうすればいいかわからない問題が発覚し、降り番の掛け声専門部隊「チーム・チョイサー」を組成したのではありますが、では指導者をどうしたものか、と。坂本監督からも「地元の年長者に教わるのがいい」とのアドバイスを受け、ふと思い出したのです。昨年7月に仙台で行った2016年度の入団説明会で、「今回は民謡にチャレンジしようと思うのですが、保護者のみなさんには馴染みあります?」とお尋ねしたんですね。その時、向かって右手の最前列に座っていた黄色い服着た女子の保護者の方から「この子のおじいちゃんが民謡の指導をしています」と伺ったのを思い出したのですね。そこで、誰だったかとその時の写真を見てみたのです。記録写真は撮っておくものですね。

なんと!あの三浦瑞穂さんではありませんか。ということで、今日の合同練習に合わせて、お母様の運転で片道3時間かけて福島市まで、311の体験談講話と民謡の掛け声指導に来ていただいたのです。それでは指導風景を動画でご紹介しましょう。まずは相馬盆唄から。

三浦秋男先生の揉み手にご注目ください。あとでお孫さんの瑞穂さんは「テンポが早くならないように、この揉み手が大事!」と言っていたとのこと。当方、人生48年にして初めて「揉み手の意義」を知りました。秋男先生によると、伊達藩だった気仙沼では藩主により盆踊りが禁止されていたため地元の盆踊り歌が生まれず、この福島の「相馬盆唄」を歌っていたそうです。ということは、こっそり殿様に隠れてこっそり盆踊りをしていたのですね。盆踊りについては民俗学的視点からの面白い研究の本があります。あえてリンクは貼りませんが・・・。
そして、掛け声について。出だしのタメがポイントのようです。先生による指導シーン、その2でございます。

そして、チーム・チョイサーの由来となった「南部よしゃれ」から。

指導のあと三浦秋男先生にお話を伺いましたところ、「震災の後、音楽のチカラというのを強く感じます。音楽を聴いて元気になる人もいれば、歌を歌ってチカラをもらう人もいる。東北ユースオーケストラもみんなが元気になるいい演奏をして欲しい。応援しています」
団員のみなさん、励みになりますね。
遠方より苺を持参でご参加いただいた三浦さんファミリー、ありがとうございました。初めて食べる気仙沼の苺があんなに大きくて甘いとは。団員たちも大喜びで、1パート1パック以上の半ダーズケースもお持ちいただいたのにすぐに約100個の胃袋におさまってしまったのでした。

さて、本番まで1ヶ月となり、昨年は1週間前から進行台本を書きはじめた愚を修正しようと、オープニングのファンファーレの作曲を前回に引き続き塘英純くん(将来は作曲家志望)に依頼しました。

背が伸びたね。その分、内容も成長していこうと、トランペット二重奏から今年はトランペット三重奏で頼むと言ったところ、

さっそく休憩時間にMacBookAirで取り掛かってくれていました。やるな今どきの中学生。手にしているのはメインのマーラー交響曲第1番のポケット楽譜。たぶんマーラーへのオマージュを意識して作曲するのでしょう。できたら坂本監督に見てもらおうね。

3月に演奏するマーラーの「巨人」には「特殊楽器」を用います。と知ったかぶりしましたが、ど素人のわたくしは「特殊楽器」という用語すらこの仕事に関わるまで知りませんでした。標準的なオーケストラの編成では使わない楽器のことです。今月の合同練習では「エスクラリネット」をどう調達するかが事前の課題になっておりました。わたくしは、今回の一件で、「エス」が「S」で「Sサイズ」のことで、フランス語だと“petite clarinette”で、だったら「ピークラリネット」じゃなかろうかとも思い、それはともかく通常のクラリネットより小さくて変ホ調で、買うととっても高いということを知りました。

こちら特殊楽器関係者です。左からTYOのテクニカル・ディレクターの飯島則充さんは、トロンボーン奏者で音大卒でプロマックスの取締役で、団員の演奏に関わること全般から、プロを目指す子供たちの相談役を担当されています。中央の男性はTYO福島事務局のまとめ役の渡辺豊さん。子供の頃はFTVジュニアオーケストラに所属してやはりトロンボーンを吹き、現在は福島市の管楽器専門店ブリリアントの経営者、社長です。福島県内での練習場所の確保やレンタル楽器の交渉、練習当日の搬出入を仕切っていただきながら、団員の楽器のメンテナンスもお願いしています。そして、右が団員のクラリネット奏者、福島高校に通う菊地桃加さんです。
さてどうやって解決したかと言うと、実は飯島さんの奥様がプロのクラリネット奏者でシエナ・ウインド・オーケストラに所属されている飯島泉さんだったと、これも今回初めて知ったのですが、なんとご自身愛用の楽器を特別に貸し出していただけました。飯島さんが「妻から絶対に壊さないように言われました」と暗い顔でおっしゃるので、気軽に「いくらぐらいするんですか?」とも聞けません。「ビュッフェクランポン プレステージュ グリンライン」という楽器名も怖いです。「プレステージュ」は英語のPrestigeのフランス語読みだと思われます。わたくしは今回の練習で菊地桃加さんに会うたびに「楽器はだいじょうぶ?壊れてない?」とネタのように聞いていました。

お借りした高級特殊楽器をそっと握りしめる菊池さんの図です。ポキッと折れそうと心配になりますが、実際は温度差に弱いのだとこれも今回はじめて知りました。快くお貸し出しいただいた飯島泉様、どうもありがとうございました。

初日は20時まで実質半日みっちりと練習をしました。さすがに団員もお疲れのご様子です。今回、岩手県、宮城県、北海道や山形、関東から参加の30名以上の団員についての宿泊問題は、JA共済さんに解決していただけました。閑散期だから大丈夫ですよと、練習会場から車で20分のJA共済経営「摺上亭大鳥」旅館に泊めていただくことができたのです。

しかも、宿までのバスも手配していただき、着いた先は身に余る高級旅館でした・・・。日中、福島の団員数々から「いいなぁ」と言われていた訳がよーくわかりました。一昨年の宮古島合宿でエコノミーなユースホステルでヤモリ他小昆虫と寝食を共にした身としては、この振れ幅にめまいですよ。

21時過ぎというレイトチェックインにも関わらず、「東北ユースオーケストラ」の横長の紙まで貼り出す専用の部屋をご用意いただきお食事をいただくおもてなしまで受けてしまいました。宿泊のオリエンをする「TYOのお姉さん」岡田直美さんの声も上ずります。
今年度の活動のはじめに「われわれは弱小、貧乏楽団であって“いつまでもあると思うな、TYO”です」と標語までつくったわたくしとしては、「今回は特別です。JA共済さんに感謝しましょう」と壊れたロボットのように言いつづけました。


TYOの日曜の朝は早い。こちらメイクや髪の手入れはしないおっさんですから遅めの6時半に起きました。

JA共済さんのお宿で朝食をいただきました。この撮影のために仲良く食事中の小・中学生三人には大人の配慮で席を移動してもらいました。ふつうなら朝ごはんを食べて、もうひと風呂が正しい温泉の流儀でありますが、朝の散歩組の引率者としてはそんなことは許されません。その発端は福島市在住のホルンの赤間奏良(あかまそら)くんからの前週に届いたLINEのメッセージでした。

確かにせっかくの宿泊滞在なのだから、飯坂温泉の魅力を知り、世の中に発信するのが恩恵を受けたものの務めだと思い、前日の練習のあと、赤間くんに飯坂温泉について語ってもらいました。

で、この企画に賛同してくれたのは小中学生6人のチビッコチーム。約1時間ほどブラタモリ並みに飯坂温泉を練り歩いたものの、早朝過ぎて足湯にはつかれず、道中問いかけた松尾芭蕉クイズもいまいち反応が悪かったのですが、飯坂温泉の情緒ある街並みを楽しめましたよ。

震災後は県外からの宿泊客がまだまだ戻っていないと聞きました。芭蕉も奥の細道で立ち寄った古湯、フォトジェニックな場所も数々あって、円盤餃子も美味しい飯坂温泉を旅の候補地にご検討ください。飯坂温泉駅前には松尾芭蕉の立派な銅像があって、しかし、その向かいには「白ポスト」なる訝しいオブジェもあり、これは美観としてどうなんだろうかと引率の先生としては思った次第。

散歩を提案してくれた生意気小学生の赤間奏良くん、どうもありがとう。そう言えば、芭蕉の旅のお供の名前は曽良だったな。
以上、飯坂温泉観光情報でした。

さて、朝の散歩組の中の一人、中学一年生の藤田サーレムくんとは昨晩遅くに露天風呂につなりながら裸のトークをしたのでありました。

ここでミニ団員紹介コーナーを展開しますと、岩手県盛岡市から参加の藤田サーレムくん、トランペット奏者の中学一年生です。前夜に風呂に入りながらこんな会話をしたのでした。
「サーレムくんはお父さんが外国の人だっけ?」
「父がイラクの人です」
「あ、イラクなんだ!」
実は、ついさっき旅館での夕飯の席で「お米に合うものはだいたい日本酒に合いますよね」とお酒も飲まずに話をしたら、指揮者の栁澤さんから「コメはいくらに合うけども、米はイラクに合わないと言いますね」という渋いアメリカ風ジョークを聞いたばかりでだったので、あまりにタイムリーな「イラク」の発語に驚いたのでありました。それは、さておき、
「えっ、お父さんはひょっとしておれ(48)と同じくらいの年か年下だったりするのかな?」
「あ、結構年いっていて60くらいかな」
「何してはんの?」
「父は大学の教授で、AIの研究をしていて、ほとんど海外出張でいなんです」
「いま旬な研究者じゃない。ということは、来月の本番の公演には観に来られない?」
「そうですね、ドイツに滞在しているみたいです」
「それはさびしいね。ところで、サーレムくん、トランペットうまいね。何年やってるの?」
「もう4年ですかね」
「4年でそんなに上手に吹けるようになるものなの?」
「トランペットを吹くのが好きなんです。だからはじめた頃からついつい好きでずっと吹いていたらこうなりました。」
「先生について教えてもらったりしていないの?」
「いや、先生に教わると、その人の幅に制限されてしまうから。でも、こないだ(トランペットのパートリーダーの中村)祐登さんに紹介されて、はじめてプロの先生にみてもらいました。吹く音が明るく響く。タンギング(舌を使って音を細かく切ることらしいです)が速いと言ってもらえました」
「好きで吹き続けてたら、いつの間にか上達していたなんて理想的じゃないか。それは極めたほうがいいね。」
「来月もコンクールで忙しくって、東北ユースオーケストラの演奏会の後、盛岡に戻ってまたすぐ東京に行きます」
「その全国大会ではいい線いくの?」
「たぶん入賞はできると思います」
「すごいな。将来は何になりたいの?」
「プロか、農業したいです」
「あはは、プロのトランペッターか、農家なんだ。どっちも楽しそうだなあ」
ぜひ藤田サーレムくんの今後にご注目ください。

さて、二日目の練習はマーラーの交響曲第1番からスタートです。

そして、今日も福島市公会堂のロビーには、朝から合流した大学生トランペットの中村くんの大阪土産も加わって、差し入れのお菓子が並びます。

このロビーに団員を激励にとJA共済連福島の地域活動支援室の八代孝明課長がお見えになりました。

昨日に続いてJA共済連福島からのお茶!

さらに間食用のパンを各種!!

そして、110名分のお弁当を運び入れていただきました。お一人で来られていた八代さんの助っ人で福島民報社の吉田高徳副部長も起こしになって、お昼休憩の前に二人でロビーに弁当を並べることまでしていただきました。

ふつう大企業ですと、こういう現場には若い者を連れて手伝わせるのが通常の光景です。しかし、この日は管理職お二人が二人だけで車に積み込んだダンボールを運び、丁寧に団員のためのお弁当を並べ、5つごとに包まれていた大きなレジ袋を一枚一枚(22枚です)きちんと畳んでまとめていらっしゃる姿に心打たれ、確信しました。
このお二人は「休日出勤をする企業に勤める会社員」という枠を超えて、「TYOを応援する熱いひとりの個人」として、この場に来られているのだな、と。
お二人とも固辞されたのですが、ここは団員に一言激励の言葉をいただいたほうがいいと思い、無理を言ってお引き止めし、午前中の練習終わりのタイミングでお話しをいただきました。

「ありがとうございます」とお礼を言う団員を前に八代さん。
「わたしは中学生の時にモノラルのラジオから流れるYMOの『テクノポリス』を聴いて育った世代です。小さい頃から憧れの坂本龍一さんと共演するみんながうらやましいくらいです。その坂本龍一さんが監督として東北ユースオーケストラを通じて復興支援していただけるのですから、しっかり応援します。演奏会に向けてがんばってください。」

続いて、昨日の練習が紹介された記事が掲載された朝刊を片手に吉田さん。
「今回、福島民報社の125周年事業として郡山公演を主催させていただくことになりました。本番までがんばって練習してください。応援しています。」
お言葉の通り、今回初めての郡山公演は興行リスクを取って主催者になっていただくことで地元公演そのものが実現しました。今日、現在でまだ売れ残っていると聞いています。坂本龍一監督以外にも吉永小百合さん、うないぐみさんにゲスト出演していただくコンサートが、S席3,000円、A席2,000円と東京大阪では考えられない価値の高さです。3月26日は日曜日ですから遠方からのご来場でも十二分に値打ちがあるはずと自信を持ってお知らせします。ぜひ満員の客席からご声援いただけたらと思います。

お昼休み、おかげさまで食事をいただくロビーは元気な笑顔でいっぱいでした。あらためてありがとうございました。
さっそく東北ユースオーケストラのInstagramに感謝のコメントともにアップする団員がいました。

ハッシュタグの使い方が慣れてますね。

二日目の午後の練習の休憩時間には、「みやぎ鎮魂の日」である3月11日の土曜日に石巻の復興住宅の集会場で行う有志メンバーでの演奏の練習も行いました。

当日は約20名の団員が自主参加して、地元の自治会が中心となって行われる追悼セレモニーでの防災訓練や炊き出しにも参加する予定と聞いています。気仙沼の三浦秋男さんのお話でも常日頃からの訓練が大切とおっしゃっていましたね。
また翌日の3月12日の日曜日には仙台三越で弦と金管のそれぞれアンサンブルでの演奏を行います。というのも、3月1日から三越伊勢丹グループではじまった「東日本復興支援どんぐりバッジチャリティ」に応援曲として昨年の演奏会で披露した坂本龍一作曲『ETUDE』をご提供したからです。現在全国の店舗で流れておりまして、仙台三越のチャリティイベントに出演することになりました。応援曲『ETUDE』はこちらの告知ページからお聞きいただけます。

これが団員に見せたどんぐりバッジのサンプルです。1個300円で各店舗1種類の28種類のバッジを販売中となっています。お近くの伊勢丹三越グループのお店で実物をご覧いただき、『ETUDE』の館内放送をお聞きいただければ!

二日間の充実した練習も終わりました。しかし演奏の練習は終わっても毎回マストな重要任務があります。お借りした大型楽器を運び出し、傷つけることなくトラックに積み込むという団員が声をかけあって協力し合う作業です。

トラックに乗り込んでいる恰幅のいい大学生は、いわき市出身の冨澤悠太くん。チューバをいつも持ち歩いているだけに、いつも力仕事のリーダーです。ティンパニなどの楽器は昨年度に引き続き、福島県立橘高校から無償貸与いただいております。いつもありがとうございます。

そして、福島駅から仙台駅に向かうバスをいつものようにみんなで見送りました。

このブルーの大型バスについても仙台の団員のお母様がお勤めのバス会社で毎度お世話になっております。繰り返しになりますが、いつもありがとうございます。

今回の二日間の合同練習であらためて実感したのは、さまざまな人や企業、団体に支えられ、この東北ユースオーケストラは成り立っているのだなあという事実です。個人の方からいただくご寄付、企業からいただく協賛金などの「お金」、そして団員が音楽活動を続けるための楽器や練習場所や飲食、宿泊、移動などの「モノ(物資)」を無償だったり、通常より安価にご提供いただいています。こういう現物支給によるご支援の受け方を英語だと”Value In Kind”、略してVIKと言ったりします。まさにお金も現物も、活動を支えるValue(価値)というモノサシでは同じです。
ピーター・ドラッカーという近代経営学の父、「マネジメント」概念を発明した泰斗に『非営利組織の経営』という著作があります。

この冒頭の一文が飛び抜けています。「非営利組織とは一人ひとりの人と社会を変える存在である。」
東北ユースオーケストラは、そんな組織になっているだろうか? なっているようでもあり、まだまだのようでもあり。しかし、たくさんの方々から「お金」と「モノ(物資)」をご支援いただいてきています。そして、もう一つ、とても重要な支援のかたちに気づいたのです。よく経営資源の3つでヒト/モノ/カネと言いますが、「ヒト」という資源を分入って見えることがあると思ったのです。
それは、「(人の)時間」です。人の生は有限で、しょせん、どんな人も、遅かれ早かれ、いつか死ぬ。この圧倒的な事実の前に、何に限られた時間を使うのか。その大切な時間を東北ユースオーケストラのために使っていただいている人がたくさんいらっしゃる。「時間を提供する」という第三の支援です。
気仙沼の三浦さんご家族は、311の死に瀕した体験を通して、生かされた自分の残された人生の使命を強く意識されていました。このことは、3年前に中咽頭がんが見つかり、克服された坂本龍一代表・監督によって、団員のためにオーケストラアレンジの譜面を書き起こしていただいたり、その貴重な時間というギフトを受けていることにも通じます。関係者のみなさんの有限な時間の贈与によって東北ユースオーケストラは成り立っています。
折しも今回の練習では決められた休憩時間が終わったらすぐに練習できるようにしようと、タイムマネジメントリーダーを福島の大学生、服部未来子さんにお願いすることにしました。これで全員のチューニングが済んだ状態でオンタイムで栁澤寿男さんを待つことができるはずです(理想)。

ついつい日常の時間の中で忘れがちなのですね。
輪廻転生を信じようが信じまいが、
この人生は一回きりであることを。

今回のレポートは合間の時間に更新しているうちについつい長くなってしまいました。わたくしは「包容力のある実存主義者」になりたいものだと思います。

あらためて引き続き東北ユースオーケストラへのご支援をよろしくお願いいたします。

引率の先生役レポーター 田中宏和拝