REPORT

2016.11.14

11月12日、第三回合同練習会を福島市で行いました。

11月12日、第三回合同練習会を福島市で行いました。

秋晴れ過ぎるほどの憎らしい晴天のもと、福島市内の福島県文化センター大ホールにて二ヶ月ぶりの合奏練習を行いました。

朝の9時前からコントラバスを笑いながら運ぶ橋本さん。大型楽器は体育会的体力が要りますね。

むしろコントラバスに運ばれている風にも見えなくも無い。続々と練習会場に団員が集合です。

舞台袖のスタッフ溜まり場にやってきたのはヴァイオリンの鈴木南美さん。東京ディズニーランドだっかシーだっかのお土産を指揮の柳澤寿男さんに渡してニッコリ。

袋の柄がもうクリスマスですよ。そして、柳澤さんはと言うと、ジュネーヴ、コソボ、熊本と演奏会で飛び回られたまま、福島入りでお疲れのところ、到着するやいなや新曲にボウイングの書き込みです。ありがとうございます。

“「ボウイング」って何? ”の皆様。どうぞご安心ください。わたくしもこの仕事をするまではこの単語を知らず、初めて耳にして「ボウリング?」と思った派です。正解は弦楽器の弓の動かし方ですね。この日の午前中は第一回演奏会で演奏した坂本龍一監督作曲の「ラストエンペラー」「ETUDE」から復習的な練習を開始。

そして来年3月の第二回演奏会で披露する新曲に取り掛かります。この日楽譜が配られたばかりの『Three TOHOKU Songs』は、世界が注目する現代音楽家のホープ藤倉大さん編曲です。元の曲は岩手、宮城、福島のそれぞれの地元の民謡を一曲づつ選んだもの。今や時代は民謡ですぜ、皆の衆。この6月に東京の未来科学館で行われたアイスランドの至宝ビヨークによる「Björk Digital」というVR(仮想現実)の展示がありましてね。そのオープンニングにご本人自ら来日してDJするというので、主に好奇心で生きているわたくしとしては、パーリィーピーポーでも無いのに物見遊山気分で行ったわけです。そしたらいきなり奄美民謡、琉球民謡にはじまり約1時間延々と日本の民謡オンパレード。これがカッコええこと甚し。おそらく現代の世界最強クリエーター(北半球女子中年部門)と言っていいビヨークさんが推すのですから、日本の民謡はこれから世界から再発見されるはずです。その日からわたくしは民謡病にかかり、160曲入って980円の日本の民謡第全集というコスパが高すぎるCDセットを買ってせっせと聞いていました。

この日の練習会場でも舞台袖にさりげなく和太鼓が常備されているのを見つけました。折しも東北ユースオーケストラの2年目は原点を確認しようということでしたので、この民謡の盛んな三県から一曲づつ選んでみました。宮城県の『大漁歌い込み』、岩手県の『南部よしゃれ』、福島県の『相馬盆唄』です。坂本監督からアレンジャーとして指名のあった藤倉さんが意気に感じて快諾していただき実現しました。

「初見でいきなりの割にはよく演奏できて安心した。去年より上手くなってるんじゃないかなぁ」とは、指揮の柳澤さんの弁。実際、事前にこの原曲を聴いたことがある団員は数名のみ。このままでは若い世代に地元の民謡は受け継がれません。楽曲の演奏だけではなく、「コリャコリャ」とか「どっこいさ〜」とか掛け声のみの練習もしました。想像以上に斬新で楽しい演奏になるはずです。上の楽譜タイトルの間違いはこちらの確認漏れでした。失礼しました。正しくは『Three TOHOKU Songs』です。昼休みは弁当のみならず、福島事務局の大塚真里さんからの差し入れの「ずんだおはぎ」が美味しくて三つも食べたかと思えば、

さらに団員の塘英純くん(パーカッション)、三浦千奈さん(ヴァイオリン)のお母様からご近所のミニパンの数々をいただき、アンパン、カレーパン、クリームチーズパンと三個も味見してしまいました。

お気遣いどうもありがとうございました。事務局スタッフで分けて美味しくいただきました。午後からはみっちり次回演奏会のメイン楽曲、マーラーの交響曲第一番の練習でした。マーラーは楽譜に事細かな演奏指示をドイツ語で書き込んでおり、その東北ユースオーケストラ版の和訳をつくりましょうとの柳澤さんの指導を受け、大学生メンバーが翻訳を分担しました。仕上げはトランペットのパートリーダー、仙台の大学生の中村祐登くんが編集して、東北ユースオーケストラオリジナルの演奏ガイドができました。

さぁ、このオリジナルの演奏ガイドも揃って、練習再開です。

それでは、どんな演奏指示が書かれているかと言うと、トランペットは“In sehr weiter Entfemung aufgestellt”の指示に従うと、こうなります。


舞台上でみんな演奏しているのに、なぜか三人が舞台袖の一番端に。近寄ると、

トランペットを吹く三人。真ん中は昨年度のキャプテン、長谷川桃さん。今年度は大学四年なので泣く泣く辞めたのに、やはり東北ユースオーケストラへの未練が強すぎて先月から出戻ってきてくれました。傍目には何かのおしおきかなとも思える図。これは「とても離れたところに奏者を置く」の指示に従っているのですね。そんなことを知らずに舞台袖の扉を開けた人はこうなります。

東北ユースオーケストラの理事のお一人、福島民報社の荒木事業局長。来年3月の郡山公演の打ち合わせのために練習会場に来られ、ドアを開けた瞬間にいきなりトランペットを吹いてる人がいたら、それは驚きますよね。夕方まではマーラーの交響曲「巨人」の丁寧な練習が続きました。指揮の柳澤さん、この日の指導の締めくくりには、「福島名物と言えば何ですか?」の問いかけがありました。一体何を言いだすのだ、この人は、とポカーンとする団員の中から、円盤餃子、ソースかつ丼などと声がちらほらあがります。「じゃあ、円盤餃子をたくさん食べて体力をつけて、長いマーラーの曲を最後までしっかり力強く弾けるようにしよう、民謡の掛け声もしっかり出そう」と指示がありました。

また畠山キャプテンからこのようなアンケートが配られました。あらためて復興支援オケとしての原点を見つめ、自分たちに何ができるかを考えようという、大学生メンバーを中心とした自主的な取り組みです。
仮設住宅に限らず、地元のお祭りやイベント、催しなどなど、いろんな演奏機会で活動したいという声が数多く挙がっています。
昨年、指揮の柳澤さんが東北ユースオーケストラを「おもしろオケ」と表現され、なるほど100名を超える大所帯で、団員の小学生から大学生まで年齢構成の幅広く、管楽器が多い編成、そして演奏レベルはバラバラだし、確かに「おもしろ」だと思ったのですが、あえて「オルタナ系オケ」だと言いたいです。震災の風化に抗する成り立ち、子どもたちの主体性を重んじる、他のオケと掛け持ちも許容し、ジュニアオケの主流ではなく変わった曲に挑んで演奏。これは「オルタナティブオーケストラ」「オルタナ系オケ」と言っていいでしょう。練習の締めくくりにそんな話をしましたが、みんなわかってくれたかな?
新しい演奏機会ということでは、大きな場所が用意されました。12月19日に大阪はフェスティバルホールで行われる、
吉永小百合×坂本龍一 チャリティコンサート
「平和のために〜詩と音楽と花と」
http://www.promax.co.jp/info/2016/121901/
この晴れ舞台に東北ユースオーケストラ弦楽四重奏で出演します。

合同練習会のあとホールのロビーに集まったのは、その選抜メンバー。第一ヴァイオリン伊藤拓也くん、第二ヴァイオリン渡邉真浩さんの福島県在住の高校生コンビに、ビオラ佐々木潮里さん、チェロ下村鈴之介くんの宮城県出身の大学生コンビの4名です。わたくしは、いかに凄い出番なのかを力説をし、みんなに教育的プレッシャーをかけて練習の邪魔をしました。東北ユースオーケストラの代表として、しっかり練習して自信を持って本番に臨んでもらいたいものです。

外に出ると、すっかり日暮れた中に帰りを送るバスが待ち、冷たい空気に冬の到来を感じます。福島駅のホームでは岩手組とばったり。

盛岡はもっと寒いんだろうな。
ということで、第三回合同練習会も充実した時間とともに無事終了しました。
これをご覧のみなさま、東北ユースオーケストラの演奏ニーズがありましたら、遠慮無くお知らせください。趣旨に合う機会でしたら、喜んで有志メンバーで伺います。タイミングが合えば、なんと柳澤寿男さんも指揮したい、サン=サーンスの『動物の謝肉祭』を演奏したい、と具体的なプランもいただいています。みなさまからのお気軽なリクエストをお待ちしております。
引き続き東北ユースオーケストラへのご支援をよろしくお願いします。